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事業主が講ずべきハラスメント対策パンフレットが公表されました(2026/7/20更新)

~令和8年10月から義務化される「カスタマーハラスメント」と「就活等セクハラ」にも対応が必要です~

 

 厚生労働省から、「事業主が講ずべきハラスメント対策パンフレット」が公表されました。

 今回のパンフレットでは、令和8年10月から新たに義務化される

 ・カスタマーハラスメント対策

 ・求職者等に対するセクシュアルハラスメント(就活等セクハラ)対策

 をはじめ、事業主が講ずべきハラスメント防止措置が体系的に整理されています。

 

 

 あわせて、パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメントについても、防止措置や相談対応など、事業主が講ずべき対応が分かりやすく解説されています。

 事業主には、法律に基づきハラスメント防止措置を講じる義務があります。

 対応が不十分な場合には、労働局からの助言・指導・勧告の対象となるほか、企業イメージの低下や人材確保への悪影響、労働紛争などにつながるおそれがあります。

 

今回のパンフレットのポイント

1. カスタマーハラスメント対策が義務化(令和8年10月)

 令和8年10月からは、顧客や取引先、施設利用者などによるカスタマーハラスメントについても、事業主に防止措置義務が課されます。

 パンフレットでは、顧客等による要求内容や、その手段・態様が社会通念上許容される範囲を超える場合には、カスタマーハラスメントに該当する可能性があるとされています。

 具体例として、

 ・過度な要求

 ・不当な損害賠償請求

 ・暴言・脅迫

 ・SNSへの誹謗中傷や晒し行為

 ・長時間にわたる拘束

 などが紹介されています。

 小売業、飲食業、医療・介護、運輸業、教育機関など、顧客との接点が多い業種では、早めの対応が重要です。

 

2.就活等セクハラ対策も義務化(令和8年10月)

 採用面接や会社説明会、インターンシップ、教育実習など、求職活動等の場面における性的な言動についても、防止措置が義務化されます。

 企業には、

 ・採用担当者への教育

 ・適切な相談体制の整備

 ・面接や採用活動における適切な対応

 などが求められます。

 これまでのように「社内の従業員だけ」を対象としたハラスメント対策ではなく、採用活動まで含めた体制整備が必要になります。

 

3.既存のハラスメント対策についても体系的に整理

 今回のパンフレットでは、新たな義務化事項だけでなく、

 ・パワーハラスメント

 ・セクシュアルハラスメント

 ・妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント

 についても、相談体制の整備や迅速な事実確認、相談者のプライバシー保護、不利益取扱いの禁止、再発防止措置など、事業主が講ずべき対応が分かりやすく整理されています。

 ハラスメント対策を見直す際のチェック資料としても活用できる内容となっています。

 

事業主が取り組むべき3つの対策

① 就業規則・ハラスメント規程の点検・見直し

 今回のパンフレットを踏まえると、多くの企業では規程の内容を点検し、必要に応じて見直すことが重要になります。

 特に、

 ・カスタマーハラスメント

 ・就活等セクハラ

 については、現行の規程で十分に対応できていない企業も少なくありません。

 

② 相談窓口と運用体制の整備

 相談窓口は設置するだけでは十分ではありません。

 相談受付から事実確認、プライバシーへの配慮、再発防止まで、一連の運用ルールを整備し、適切に運用することが重要です。

 

③ 管理職・従業員・採用担当者への研修

 ハラスメントは、無意識の言動や知識不足から発生するケースも少なくありません。

 特にカスタマーハラスメントや就活等セクハラは、現場や採用担当者の判断が重要になるため、継続的な研修による理解の促進が求められます。

 

ハラスメント対策は「企業防衛」の重要課題

 今回のパンフレットでは、事業主が講ずべき措置がより具体的に示されています。

 ハラスメント対策は、「できれば実施した方がよい取組」ではなく、法律に基づいて事業主が適切に対応すべき事項です。

 問題が発生すると、労働局からの助言・指導・勧告だけでなく、企業イメージの低下、人材の流出、採用活動への悪影響、労働紛争など、企業経営に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

 パンフレットは、以下よりご確認願います。

https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001338359.pdf

 

人事労務マガジン特集246号をわかりやすく解説(2026/7/19更新)

同一労働同一賃金の改正をはじめ、企業が押さえておきたい最新情報

 

 厚生労働省は、「人事労務マガジン 特集第246号」を公表しました。

 

 今回の特集では、令和8年10月施行予定の同一労働同一賃金に関する制度改正をはじめ、派遣労働者の  待遇改善、外国人労働者の雇用管理、技能継承、人材活用に関する支援制度など、企業の人事労務に関わる最新情報が幅広く紹介されています。

 制度改正への対応が遅れると、労務トラブルや行政指導のリスクにつながる可能性もあります。

今回は、企業の人事労務担当者や経営者が押さえておきたいポイントをわかりやすく整理します。

 

1.同一労働同一賃金の改正 ― 令和8年10月施行予定

 今回の特集で最も重要なテーマが、同一労働同一賃金に関する省令・告示の改正です。

主な改正ポイント

労働条件明示事項の追加

 雇入れ時に交付する労働条件通知書などへ、待遇に関する説明を求めることができる旨を明示することが必要となります。

ガイドラインの見直し

 賞与、退職手当、各種手当、福利厚生などについて、不合理な待遇差の考え方がより具体化されました。

待遇差の説明方法の明確化

 企業は、口頭で説明するだけでなく、説明事項を網羅した資料を活用するなど、労働者が理解しやすい方法で説明することが求められます。

 

企業が今から取り組みたいこと

 この改正を踏まえ、企業では次のような準備を進めておくことが重要です。

 ・賃金制度や各種手当の見直し

 ・福利厚生制度の点検

 ・待遇差について合理的に説明できる資料の整備

 ・労働条件通知書などの様式の見直し

 今後は、「待遇差があること」だけではなく、「その理由を適切に説明できるか」がより重要になると考えられます。

 

2.派遣労働者の同一労働同一賃金セミナー(無料)

 厚生労働省では、派遣元事業主などを対象に無料オンラインセミナーを開催します。

 内容は、

 ・同一労働同一賃金制度の基本

 ・改正内容のポイント

 ・実際のトラブル事例

 ・行政による指導監督のポイント

 ・制度施行後5年見直しの内容

 など、実務に直結する内容となっています。

 派遣労働者を受け入れている企業や派遣事業を行う企業にとって、有益な情報収集の機会となるでしょう。

 

3.労働者協同組合を活用した地域づくり

 特集では、労働者協同組合をテーマとしたオンラインセミナーも紹介されています。

 地域課題の解決や事業承継などの事例が紹介されており、

 ・地域密着型事業

 ・地域活性化

 ・新たな雇用創出

 などに関心のある企業にとって参考になる内容です。

 地域との連携を検討している企業は、一つの選択肢として知っておくとよいでしょう。

 

4.ものづくりマイスター制度 ― 技能継承を支援

 製造業や建設業では、技能継承が大きな課題となっています。

 厚生労働省では、「ものづくりマイスター制度」のオンデマンド説明会を公開しており、制度の活用方法を学ぶことができます。

 例えば、

 ・ベテラン技能者の知識や技術の継承

 ・若手社員の育成

 ・技能レベルの向上

 など、人材育成に役立つ制度として活用が期待できます。

 技能継承に課題を感じている企業は、一度制度の内容を確認してみるとよいでしょう。

 

5.外国人労働者の雇用労務責任者講習(無料)

 外国人労働者を雇用する企業向けに、無料の「雇用労務責任者講習」が実施されます。

 講習では、

 ・雇用管理の基本

 ・労働関係法令

 ・円滑なコミュニケーション

 ・文化や習慣への配慮

 などを学ぶことができます。

 外国人雇用が広がる中、適切な雇用管理は企業にとってますます重要になっています。

 

まとめ

 今回の「人事労務マガジン 特集246号」は、制度改正への対応と、多様な人材活用に関する情報がバランスよくまとめられた内容となっています。

 特に、令和8年10月施行予定の同一労働同一賃金の改正については、企業への影響が大きく、早めの準備が重要です。

 企業としては、次の3点を意識して対応を進めるとよいでしょう。

 ・待遇差を合理的に説明できる制度・資料を整備すること

 ・派遣労働者や外国人労働者、高齢者など、多様な人材が活躍できる職場づくりを進めること

 ・厚生労働省が提供するセミナーや支援制度を積極的に活用すること

 制度改正は、施行直前になって対応するよりも、早い段階から情報収集と準備を進めることが円滑な実務対応につながります。

 今回の特集は、その第一歩として参考になる内容ですので、人事労務担当者や経営者の皆様は一度目を通しておくことをおすすめします。

 

 詳細は、以下よりご確認願います。

 

 

令和7年度「過労死等の労災補償状況」公表(2026/7/18更新)

― 労災リスクは確実に“見える化”が進む。今こそ職場の健康管理体制を整えるべき理由 ―

 

 厚生労働省は、令和7年度の「過労死等の労災補償状況」を公表しました。

 

 過労死等に関する労災補償状況は、近年、請求件数が高い水準で推移しており、企業には長時間労働の是正だけでなく、メンタルヘルス対策やハラスメント防止など、職場環境全体の改善が求められています。

 本記事では、公表されたデータのポイントと、事業主が取り組むべき実務上の対応について、社労士の視点からわかりやすく解説します。

 

🔍 今年の特徴(事業主がまず知るべき数字)

(出典:厚生労働省「令和7年度「過労死等の労災補償状況」)

 

 厚生労働省が公表した主な内容は次のとおりです。

 ・請求件数:6,212件(前年度比+1,402件)

 ・決定件数:4,692件(前年度比+377件)

 ・支給決定件数:1,310件(前年度比+5件)

 ・死亡・自殺(未遂を含む):145件(前年度比△14件)

 請求件数が大幅に増加している一方で、死亡・自殺(未遂を含む)は減少しています。

 この結果からは、精神的不調や健康障害について労災請求が行われるケースが増えていることがうかがえます。企業としては、問題が深刻化する前に職場環境を改善し、早期対応につなげる体制づくりがこれまで以上に重要となっています。

 

🧠 脳・心臓疾患の傾向

 脳・心臓疾患に関する状況は次のとおりです。

・請求件数:1,254件(前年度比+224件)

・死亡件数:303件(前年度比+48件)

 業種別では、

・運輸業・郵便業:257件

・サービス業:166件

・建設業:164件

 となっています。

 特に道路貨物運送業では請求件数が引き続き多く、長時間労働や拘束時間の適正な管理が重要な課題となっています。

 

🧩 精神障害の傾向

 精神障害に関する請求件数は、

 ・4,958件(前年度比+1,178件)

 となり、脳・心臓疾患の約4倍に上っています。

 職場におけるメンタルヘルス対策の重要性が、統計上もより明確になっています。

 

 業種別の請求件数

 ・医療・福祉:1,288件

 ・製造業:720件

 ・卸売・小売業:645件

 医療・福祉の中でも社会保険・社会福祉・介護事業が最も多く、介護・医療現場では依然として高いストレス負荷が続いていることがうかがえます。

 

 支給決定につながった主な出来事

 ・パワーハラスメント:222件

 ・顧客・利用者等からの著しい迷惑行為(カスタマーハラスメント):127件

 ・セクシュアルハラスメント:127件

 ・仕事内容・仕事量の大きな変化:113件

 これらの結果からも、ハラスメント対策をはじめとする職場環境全体の改善が、精神障害の労災防止につながる重要な取組であることがわかります。

 

⚠ 時間外労働との関係

 脳・心臓疾患では、

 1か月100~120時間の時間外労働で支給決定された件数が最も多くなっています。

 一方、精神障害では、

 ・20時間未満:57件

 ・40~60時間未満:55件

 と、必ずしも長時間労働だけが原因ではありません。

 精神障害の労災認定では、時間外労働だけでなく、

 ・ハラスメント

 ・顧客等からの迷惑行為

 ・人間関係

 ・業務内容・業務量の急激な変化

 など、さまざまな心理的負荷を総合的に評価して判断されます。

 そのため、「残業時間が少ないから安心」という考え方は通用しない時代になっています。

 

📌 事業主が今すぐ取り組むべき3つのポイント

① ハラスメント対策の実効性を高める

 研修を実施するだけでは十分とはいえません。

 ・相談窓口の整備

 ・相談内容・対応経過の記録

 ・迅速な事実確認と早期対応

 など、実際に機能する仕組みを構築することが重要です。

 

② 労働時間を適切に管理する

 長時間労働は依然として脳・心臓疾患の大きなリスク要因です。

 勤務時間を正確に把握し、時間外労働を適切に管理できる体制を整えることが重要です。勤怠管理システムの活用も有効な方法の一つといえるでしょう。

 

③ メンタルヘルス不調の早期発見・早期対応

 精神障害は、残業時間だけでは判断できません。

 日頃から管理職による声掛けや面談、相談しやすい職場づくりを進めることが、労災防止につながります。

 

📝 まとめ

労災は「事業主の管理体制」が問われる時代へ

 令和7年度の労災補償状況からは、企業における健康管理や職場環境の重要性がこれまで以上に高まっていることが読み取れます。

 労災認定件数が増加する中、企業には「問題が起きてから対応する」のではなく、「問題を未然に防ぐ労務管理」が求められています。

 また、過労死等の労災認定では、労働時間だけでなく、日頃の勤怠管理、面談記録、相談対応の経過なども重要な判断材料となります。

 つまり、企業がどのような健康管理や労務管理を行っていたかが問われる時代になっているのです。

今回の公表結果を、自社の労務管理体制や健康管理体制を見直すきっかけとして活用してみてはいかがでしょうか。

 

 詳細は、以下よりご確認願います。

 

 

 

【令和8年8月施行】高額療養費制度が見直しへ ~年間上限額の新設など改正ポイントを解説~(2026/7/14更新)

 協会けんぽは、令和8年8月から実施される高額療養費制度の見直しについて案内を公表しています。

 今回の見直しは、長期にわたり治療が必要な方の負担軽減を図るとともに、高額療養費制度を将来にわたって維持していくことを目的とした制度改正です。

 高額療養費制度は、1か月(月の初日から末日まで)に支払った医療費の自己負担額が一定の限度額を超えた場合に、その超えた額が高額療養費として支給される制度です。

 令和8年8月からは、所得区分ごとの自己負担限度額の見直しに加え、新たに「年間上限額」が設けられます。

 

◆改正のポイント

① 自己負担限度額の見直し

 制度の持続可能性を確保する観点から、所得区分ごとの月ごとの自己負担限度額が見直されます。

 所得区分によって改正内容は異なり、一部の所得区分では自己負担限度額が引き上げられます。

 一方で、「多数回該当」の仕組みは引き続き維持されます。

 多数回該当とは、過去12か月以内に3回以上高額療養費の支給を受けた場合、4回目以降は自己負担限度額が軽減される制度です。

 長期にわたり高額な治療を受ける方への配慮は、引き続き維持されます。

 

(出典:協会けんぽホームページ)

 

② 年間上限額の新設(毎年8月~翌年7月)

 今回の改正で最も大きな変更点が、年間の自己負担額に上限が設けられることです。

 対象期間は毎年8月から翌年7月までの12か月間です。

 この期間中の自己負担額を合算し、年間上限額を超えた場合には、超えた金額が後日、高額療養費として支給されます。

 これにより、長期間にわたり継続的な治療を受ける方の年間負担が抑えられることになります。

 特に次のような方は、今回の改正による負担軽減の効果が期待されます。

 ・長期間にわたり継続的な治療が必要な方

 ・低所得者

 ・標準報酬月額15万円以下の方(年間上限額41万円の対象。年間上限額による支給は令和9年8月以降開始予定)

※標準報酬月額とは、健康保険料や厚生年金保険料の計算の基礎となる金額です。

 

(出典:厚生労働省ホームページ「医療保険制度改正法が成立しました」)

 

③ 自分の所得区分を確認する方法

 制度改正後の自己負担限度額は、所得区分によって異なります。

 自分の所得区分は、次の方法で確認できます。

 ・マイナポータル

 ・健康保険の資格情報

 ・勤務先から通知される標準報酬月額に関する書類 など

 自分がどの所得区分に該当するかを確認しておくことで、制度改正後の自己負担額を把握しやすくなります。

 

◆実務担当者が押さえておきたいポイント

●企業担当者向け

 今回の制度改正により、従業員から「自己負担限度額は変わるのか」「自分はどの所得区分になるのか」といった問い合わせが増えることが予想されます。

 特に、長期療養中の従業員や標準報酬月額15万円以下の従業員については、年間上限額の対象となる可能性があります。

 制度の概要や所得区分の確認方法をあらかじめ把握しておくことで、従業員への案内も円滑に行うことができるでしょう。

 

●被保険者・一般加入者向け

 今回の改正では、一部の所得区分で月ごとの自己負担限度額が引き上げられる一方、年間上限額が新設されることで、長期間にわたり高額な医療費がかかる方の年間負担は軽減される仕組みとなっています。

 医療費が高額になることが見込まれる場合には、マイナ保険証を利用することで、窓口での支払いを自己負担限度額までに抑えられる場合があります。制度を上手に活用することも重要です。

 

まとめ

 令和8年8月から実施される高額療養費制度の見直しは、制度の持続可能性を確保しながら、長期療養者へのセーフティネットをさらに充実させることを目的とした改正です。

 一部の所得区分では月ごとの自己負担限度額が見直されますが、新たに年間上限額が設けられることで、長期間にわたり治療を受ける方の負担軽減が図られます。

 企業の実務担当者においては、制度改正の内容を理解するとともに、従業員からの問い合わせに適切に対応できるよう準備しておくことが大切です。

 制度の詳細や最新情報については、協会けんぽや厚生労働省が公表する資料を確認し、正確な情報に基づいて対応を進めましょう。

 

 詳細は、以下よりご確認願います。

 

 

育児休業等給付の申請手続きが令和8年8月から見直しへ(2026/7/13更新)

~出生時育児休業給付金の賃金申告方法や育児時短就業給付の手続きがよりシンプルに~

 

 厚生労働省は、育児休業等給付の申請手続きの見直しに関するリーフレットを公表しました。

 

 

 今回の見直しは、事務負担の軽減と申請の迅速化を目的としたもので、出生時育児休業給付金の賃金の申告方法や育児時短就業給付の確認方法など、企業が日常的に行う申請実務に関わる内容が変更されます。

 令和8年8月1日以降の申請から適用されるため、給与担当者や人事担当者は早めに内容を確認しておきたいところです。

 この記事では、今回の見直しのポイントを分かりやすく解説します。

 

1.出生時育児休業給付金の「申告する賃金」の考え方が変更

 これまでは、

 「出生時育児休業期間を対象として支払われた賃金」

 を申告していました。

 令和8年8月1日以降は、

 「出生時育児休業期間中に支払日がある賃金」

 を申告する方法へ変更されます。

 

●ポイント

・月末締め・翌月払いなど、給与の支払日を基準として判断する方式へ一本化

・分割して出生時育児休業を取得した場合でも、休業期間中に支払日がある賃金を申告

・給与締日・支払日を踏まえた確認がこれまで以上に重要

 従来は「休業期間に対応する賃金」を基準としていましたが、今後は「支払日」を基準として確認することになります。そのため、給与担当者は給与計算スケジュールと育児休業期間との関係を十分確認しておく必要があります。

 

2.出生後休業支援給付金の配偶者確認書類の取扱いが見直し

 配偶者の確認書類についても取扱いが見直されます。

 母親が申請する場合でも、父親と同様に、

 母子健康手帳(出生済証明ページ)の写し

 を提出できるようになります。

 

●ポイント

・母子健康手帳で確認できる場合は、その写しで提出可能

・母子健康手帳で確認できない場合は、世帯全員の住民票などの確認書類の提出を求められる場合がある

 確認書類が簡素化されることで、申請時の負担軽減が期待されます。

 

3.育児時短就業給付の支給要件の確認方法が見直し

 育児時短就業給付については、支給要件の確認方法が見直され、申請時の確認書類や申請書の記載事項が簡素化されます。また、多様な働き方に対応した週所定労働時間の算定方法も明確化されます。

 

●ポイント

同一の子について育児休業給付金を受給している場合は、母子健康手帳の写しなどの確認書類の提出を省略可能

 

育児休業給付に係る育児休業終了後、同一の子について初回育児時短就業を開始した場合であって、育 児休業を開始した後、育児時短就業を開始するまでの間に賃金の支払いがないことを賃金証明書及び添 付書類で確認できれば、賃金証明書の⑨欄、⑩欄及び⑪欄(育児休業開始前の賃金支払状況)の記載を 省略可能

 

・次の労働時間制度の適用を受ける被保険者について、週所定労働時間の計算方法を一部見直し

 ◦フレックスタイム制:清算期間における総労働時間の算出基礎となった1日の労働時間×週所定勤務日数

 ◦変形労働時間制:対象期間における1週間の平均労働時間

 ◦シフト制:次の労働時間を該当期間の週数(暦日数÷7日)で除して計算。 

  (短縮前)育児時短就業を開始した日前の3か月間における実際の労働時間 

  (短縮後)支給対象月に支払われた賃金の算定対象期間における実際の労働時間 

  ※賃金が月末締め、翌月支払いの場合は支給対象月における実際の労働時間

 

・時短前後の週所定労働時間の確認書類について、賃金台帳等と同様に、照合省略対象事業主等について は関係書類との照合省略が可能に。

 

4.育児時短就業給付の証明書(様式例)が改訂

 育児時短就業期間等に係る証明書(様式例)が改訂され、育児時短就業開始日や週所定労働時間を証明書内で確認できるようになります。これにより、これらを確認するための別途の添付書類が不要となるケースが増え、申請手続きの簡素化が期待されます。

 

まとめ|「支払日ベース」と「申請手続きの簡素化」がキーワード

 今回の見直しは、

・申請手続きの迅速化

・企業・申請者双方の事務負担の軽減

 を目的として実施されます。

 制度そのものを大きく変更するものではありませんが、出生時育児休業給付金の賃金の申告方法は、実務処理が変わる重要なポイントです。

 また、育児時短就業給付についても、確認書類の提出や申請書の一部記載が省略できる取扱いが導入されるなど、申請手続きの簡素化が図られます。

 給与担当者や人事担当者は、給与締日・支払日と育児休業期間との関係を改めて確認するとともに、必要書類を円滑に準備できるよう社内で情報共有しておくことが望まれます。

 令和8年8月の施行までに、自社の運用や申請フローを確認し、スムーズに対応できるよう準備を進めておきましょう。

 詳細な取扱いや記載例については、厚生労働省が公表しているリーフレットをご確認ください。制度開始前に一度目を通しておくことで、実際の申請手続きもより円滑に進められるでしょう。

 

詳細は、以下よりご確認願います。

https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001720846.pdf

 

ハラスメント対策に新たな情報 あかるい職場応援団で「職場のハラスメント対策コラム」がスタート(2026/7/12更新)

 厚生労働省が運営する「あかるい職場応援団」で、新たに「職場のハラスメント対策コラム」の掲載が始まりました。

 

 

 このコラムは、労働法、とりわけハラスメント法制を専門とする大学教授が執筆を担当されます。今後、最新の法改正や判例、実務上の留意点などについて、専門家の視点から継続的に解説が行われる予定です。

 コラムの冒頭では、次のように述べらえれいます。

「労働法、特にハラスメントの法律問題について研究しています。最新の法改正や判例など、タイムリーな情報をお届けできたらと思っています。」

 専門家による継続的な情報発信が始まったことで、事業主・人事担当者・管理職にとって、ハラスメント対策に関する最新の法改正や実務上の留意点を学ぶための有益な情報源となることが期待されます。

 

第1回コラムのテーマ

「カスタマーハラスメント・求職者等へのセクシュアルハラスメントの法制化」

 

 公開された第1回コラムでは、

 ・カスタマーハラスメント

 ・求職者等に対するセクシュアルハラスメント

 に関する法制化について取り上げられています。

 これらは、令和8年10月施行の改正労働施策総合推進法により、企業に防止措置が義務付けられる内容と密接に関わるテーマです。法改正の背景や制度の趣旨、企業に求められる対応を理解するうえでも、参考となる内容となっています。

 

●コラム開始の意義

 実務担当者が「今知るべきこと」にアクセスできる場

 ハラスメント対策は、法改正や判例、行政の動向などが比較的早いスピードで変化する分野です。そのため、事業主や人事担当者が必要な情報を継続的に把握することは容易ではありません。

 今回のコラムでは、

 ・最新の法改正情報をタイムリーに把握できる

 ・判例や制度のポイントを専門家の視点から理解できる

 ・企業が取るべき実務対応のヒントを得られる

 ・関心のあるテーマについて、サイト内の関連資料も活用しながら理解を深められる

 といった点が期待されます。

 

●企業としてどう活用するか

 企業・事業主の皆さまには、次のような活用方法がおすすめです。

 ・法改正の早期キャッチアップ

 ・社内研修や管理職研修の教材として活用

 ・就業規則やハラスメント防止規程の見直しの参考

 ・ハラスメント相談窓口担当者の知識向上

 特に、カスタマーハラスメントや求職者等へのセクシュアルハラスメントは、企業に防止措置が義務付けられる分野であり、適切な対応体制の整備が企業の信頼性にも大きく影響します。制度の趣旨や実務上の留意点を正しく理解し、早めの準備を進めることが重要です。

 

●まとめ

 ハラスメント対策の「今」を学べる信頼性の高い情報源

 「あかるい職場応援団」の新コラムは、ハラスメント対策に携わるすべての方にとって、最新の法改正や判例、実務対応を学ぶことができる有益な情報源といえるでしょう。

 行政が運営する公式サイトに加え、専門家による継続的な解説が掲載されることで、信頼性の高い情報を効率よく収集できる環境が整いました。

 令和8年10月の法改正への対応を進めるためにも、今後の更新に注目しながら、企業のハラスメント対策の充実にぜひ役立ててみてはいかがでしょうか。

 

 詳細は、以下よりご確認願います。

 

 

令和7年度「個別労働紛争解決制度の施行状況」──相談件数は高止まり、現場で何が起きているのか(2026/7/11更新)

 厚生労働省は、「令和7年度 個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表しました。

 総合労働相談件数は 119万8,010件となり、18年連続で100万件を超える高水準が続いています。労働トラブルは依然として身近な問題であり、企業の労務管理においても重要な課題となっていることがうかがえます。

 

(出典:厚生労働省「令和7年度個別労働紛争解決制度の施行状況」)

 

1.総合労働相談は高止まり

 総合労働相談件数は 、119万8,010件(前年度比0.3%減)でした。

 内訳を見ると、

 ・法制度の問い合わせ:78万3,579件(前年度比3.8%減)

 ・労働基準法違反の疑い:22万9,156件(同10.4%増)

 ・民事上の個別労働関係紛争:27万7,053件(同3.5%増)

 となっています。

 制度に関する問い合わせや労働基準法違反が疑われる相談が引き続き多い状況にあり、企業には法令を踏まえた適切な労務管理や、職場におけるルールの周知・運用がこれまで以上に求められているといえるでしょう。

 

2.民事上の個別労働紛争の相談内容

 民事上の個別労働関係紛争では、今年度も**「いじめ・嫌がらせ」55,614件(前年度比1.1%増)が最多となり、14年連続で相談件数のトップとなりました。

 相談内容の上位は次のとおりです。

 ・いじめ・嫌がらせ:55,614件(前年度比1.1%増)

 ・自己都合退職:38,386件(同7.5%減)

 ・労働条件の引き下げ:33,368件(同8.2%増)

 ・解雇:32,651件(同1.8%増)

 ・退職勧奨:26,022件(同1.6%増)

 特に「労働条件の引き下げ」に関する相談が増加している点は、人件費の見直しや経営環境の変化を背景として、労働条件の変更を巡るトラブルが増えている可能性もうかがえます。

 

3.助言・指導の申出は増加、最多は「労働条件の引き下げ」

 都道府県労働局長による助言・指導の申出は、9,616件(前年度比8.5%増)となりました。

 申出内容の上位は、

 ・労働条件の引き下げ:1,220件(10.7%)

 ・いじめ・嫌がらせ:1,163件(10.2%)

 ・雇用管理等:937件(8.2%)

 となっています。

 助言・指導の処理は94.7%が「助言」によるものであり、ほとんどの案件が1か月以内に処理されています。

 助言・指導には法的拘束力はありませんが、比較的迅速に利用できる行政サービスであり、紛争が深刻化する前の解決手段として活用されていることがうかがえます。

 

4.あっせん申請は大幅増、最多は「解雇」

 紛争調整委員会によるあっせん申請は4,486件(前年度比16.0%増)と大きく増加しました。

 申請内容の上位は、

 ・解雇:892件(18.2%)

 ・いじめ・嫌がらせ:868件(17.8%)

 ・雇止め:475件(9.7%)

 ・労働条件の引き下げ:453件(9.3%)

 となっています。

 一方で、あっせんの合意率は27.0%となり、前年度より低下しました。また、当事者双方があっせんに参加した割合も45.4%と半数を下回っています。

 これらの結果からは、当事者間の対立が深まり、話合いによる解決が難しい事案が増えている可能性もうかがえます。

 

5.実務家として感じるポイント

● 「いじめ・嫌がらせ」が依然として最多

 パワーハラスメント防止措置が義務化された後も、「いじめ・嫌がらせ」は依然として相談件数の最多項目です。

 規程を整備するだけでなく、管理職への教育や相談しやすい職場環境づくりなど、制度を実効性のあるものとする取組が重要であることを示していると考えられます。

 

● 「労働条件の引き下げ」への対応は慎重に

 人件費の見直しや経営環境の変化を背景に、賃金や諸手当など労働条件の見直しを検討する企業も少なくありません。

 しかし、労働条件の不利益変更には労働契約法などのルールがあり、十分な説明や適切な手続を欠くと、労使間の紛争へ発展するおそれがあります。制度を正しく理解し、丁寧な説明と合意形成を図ることが重要です。

 

● 初期対応の重要性はますます高まる

 あっせんへの参加率や合意率が低下していることから、紛争がより複雑化・長期化している可能性も考えられます。

 トラブルが大きくなってから対応するのではなく、相談があった段階で事実関係を確認し、適切な対応を行うことが、紛争の拡大を防ぐための重要なポイントといえるでしょう。

 

6.まとめ

 令和7年度の個別労働紛争解決制度の施行状況からは、

 ・総合労働相談件数は18年連続で100万件を超える高水準が続いていること

 ・「いじめ・嫌がらせ」が14年連続で最多となったこと

 ・「労働条件の引き下げ」に関する相談や助言・指導の申出が増加していること

 ・解雇や雇止めを巡る紛争が依然として多いこと

 ・あっせんの合意率や参加率が低下し、紛争の複雑化がうかがえること

 などが明らかになりました。

 

 労働紛争の多くは、突然発生するものではなく、日頃のコミュニケーション不足やルールの曖昧さ、小さな対応の遅れが積み重なって表面化します。

 そのため、就業規則の整備だけでなく、管理職教育や相談体制の充実、日常的な労務管理の見直しを継続して行うことが、紛争予防につながります。

 今回の統計は、「問題が起きてから対応する」のではなく、「問題を起こさない職場づくり」の重要性を改めて示す内容であったといえるでしょう。

 

 詳細は、以下よりご確認願います。