連合(日本労働組合総連合会)は2026年5月、「就職差別に関する調査2026」を公表しました。
15〜29歳の若年層1,000名を対象に、直近3年以内の就職活動経験を調査したもので、採用選考における差別的取り扱いの実態が明確に示されています。
本記事では、労務実務の視点から、特に重要なポイントを整理します。
1. 戸籍謄本の提出を求められた人が 39.1%(前回比+8.3pt)
職業安定法では、戸籍謄(抄)本の提出要求は原則禁止です。
にもかかわらず、今回の調査では4割近くが提出を求められたと回答しました。
特に 中卒者では54.1% と突出して高く、学歴による扱いの差が浮き彫りになっています。
→採用選考における個人情報収集は、合理的理由がない限り認められません。 企業側の法令理解不足が依然として残っていることが示唆されます。
2. 面接での不適切質問が 18.0%
面接で「不適切だと思う質問・発言をされた」人は18%。
内容は深刻で、以下のような例が挙げられています。
・恋愛タイプを聞かれた
・結婚・出産の予定を執拗に質問
・体型・メイクなど外見への言及
・親の職業・年収を質問
・学歴や経歴を否定する発言
特に女性では結婚・出産、男性では恋愛・容姿に関する質問が目立ちます。
3. “学歴フィルター”を感じた人が 44.3%(前回比+3.9pt)
学歴による選考のふるい分けを感じた人は4割超。
中卒者では 54.1%(+8.9pt) と大幅に増加しています。
企業側が意図せずとも、説明会参加条件やエントリーシートの扱いなどで、 結果的に学歴差別につながるケースがある点は注意が必要です。
4. “男女差別”を感じた人は 36.0%
特に男性で 37.4%(前回比+7.3pt)と増加。
中卒者では 67.6% と極めて高い割合です。
差別の内容としては、
・男女で採用職種が異なる(総合職は男性、一般職は女性など)
・採用予定人数が男女で異なる
・男性のみ/女性のみ募集
・年齢制限が男女で異なる
など、旧来型の慣行が依然として残っていることがわかります。
5. SNSアカウント調査が急増
企業から「SNSアカウントを調査する」と通知された人は 20.8%(+9.1pt)、 実際に調査された人は 21.8%(+11.1pt) と大幅に増加。
SNS調査は、運用次第で身元調査に該当するリスクがあり、 新たな就職差別につながる可能性が指摘されています。
6. AI面接の普及と評価の分かれ
AI面接を受けた人は 20.6%。 AI選考に対する印象は、
・よい印象:29.4%
・よくない印象:27.1%
・どちらともいえない:43.5%
と評価が割れています。
肯定的な理由
・緊張しにくい
・感情に左右されない
・大量の応募者を公平に扱える
否定的な理由
・人間性が伝わらない
・AIのバイアスが心配
・技術の信頼性に不安
AI選考は今後さらに普及が予想されるため、 企業側には透明性の高い運用が求められます。
■ 労務実務として押さえるべきポイント
① 採用担当者への教育は必須
面接官の「無自覚な質問」が差別につながるケースが多く、 採用担当者研修のアップデートが不可欠です。
② 応募書類・面接項目の棚卸し
戸籍・家族・思想・宗教など、採用に必要のない項目が紛れ込んでいないかを点検する必要があります。
③ SNS調査・AI選考はルール整備が急務
企業が導入する場合は、
・目的
・対象範囲
・評価基準
・保存期間
などを明確にし、応募者に説明することが求められます。
④ 中卒者への不適切対応が目立つ
調査では、中卒者が最も不利益を受けている傾向が顕著です。 採用現場の「慣行」が残りやすい層であり、 企業側の意識改革が急務といえます。
■ まとめ
今回の調査は、採用現場における就職差別が依然として根強く存在することを示しています。
特に、戸籍提出・不適切質問・SNS調査・学歴フィルターなど、法令やガイドラインで問題視されている行為が、若年層の就職活動で実際に起きている点は重く受け止める必要があります。
企業にとって採用は「最初の労務管理」。
ここでの不適切な対応は、後のトラブルや企業イメージの毀損につながります。
公正な採用選考の徹底は、企業の信頼性を高める重要な取り組みです。
詳細は、以下よりご確認願います。
https://www.jtuc-rengo.or.jp/info/chousa/data/20260521.pdf?8356
― 大学生の就職率は98.0%、引き続き高水準を維持 ―
厚生労働省と文部科学省は、令和8年3月に大学・短期大学・高等専門学校・専修学校(専門課程)を卒業した学生の就職状況を取りまとめ、公表しました。
今年も就職率は非常に高い水準を維持しており、企業の採用意欲が引き続き強いことがうかがえます。
◆ 今年の就職率のポイント
● 大学生の就職率は 98.0%
公表資料によると、大学生の就職率は 98.0%(前年同期比増減なし) とされています。
これは発表資料の中心となる数字で、例年と同様に高い水準です。
● 短期大学は 97.4%(前年より0.4ポイント上昇)
短期大学は前年より改善し、97.4%となりました。
● 大学・短大・高専の合計は 98.0%
大学等全体でも98.0%と、前年からの変動はありません。
専修学校(専門課程)を含めると 98.1% となっています。
◆ 背景にある採用環境
今年の就職率が高水準を維持した背景には、以下のような要因が考えられます。
・企業の人手不足感が依然として強い
・新卒採用の早期化・通年化が進み、学生の選択肢が広がっている
・コロナ禍後の経済活動の回復が定着し、採用枠が安定している
特に中小企業を中心に若年層の確保が課題となっており、採用意欲は引き続き高い状態が続いています。
◆ 未就職者への支援も継続
就職率が高いとはいえ、一定数の学生は未就職のまま卒業しています。
厚生労働省は、こうした学生に対して次のような支援を継続するとしています。
・新卒応援ハローワークの就職支援ナビゲーターと大学の就職相談員が連携し、個別支援を実施
・企業に対しては、既卒者も卒業後3年間は「新卒枠」で応募できるよう周知徹底
若者雇用促進法に基づく取り組みも継続され、既卒者の就職機会確保が図られています。
◆ 社会保険労務士としての視点
今回のデータから見えてくるのは、「採用市場は依然として売り手市場」という現実です。
企業側は採用競争が激しく、学生側は選択肢が広い状況が続いています。
企業にとっては、
・内定辞退対策
・入社後の定着支援
・労働条件の明確化と適正な提示
などがますます重要になります。
◆ まとめ
令和8年3月卒の就職率は、大学生で 98.0% と非常に高い水準を維持しました。
短大や専修学校を含めてもほぼ同様の水準で、採用市場の活発さが続いています。
一方で、未就職者への支援や既卒者の就職機会確保など、行政の取り組みも継続されており、企業側にも理解と対応が求められます。
詳細は、以下よりご確認願います。
厚生労働省は、全国高等学校長協会、主要経済団体(経団連・日本商工会議所・全国中小企業団体中央会)、文部科学省とともに開催した「高等学校就職問題検討会議」において、令和9年3月に高等学校等を卒業する生徒の採用選考期日を取りまとめ、公表しました。
高卒採用は、毎年スケジュールが厳格に定められており、企業側の準備も早期に求められます。本記事では、今回公表された採用選考スケジュールのポイントを整理します。
1. 高卒採用スケジュール(令和9年3月卒)
今回公表された主な日程は以下のとおりです。
■ ハローワークによる求人申込書の受付開始
6月1日
高校生向け求人は、ハローワークが内容を確認した後、学校へ提出されます。
■ 企業による学校への求人申込・学校訪問開始
7月1日
企業が学校へ求人票を提出し、進路指導担当者との面談や学校訪問を行えるのはこの日からです。
■ 学校から企業への応募書類提出開始
9月5日 ※沖縄県は 8月30日
地域差があるため、沖縄県の企業は特に注意が必要です。
■ 企業による選考開始・採用内定開始
9月16日
この日以降、企業は選考を開始し、内定を出すことができます。
2. 企業が準備すべきポイント
高卒採用は、一般採用と異なり「学校推薦」を中心とした独自のルールがあります。 今回のスケジュールを踏まえ、企業が準備すべき事項を整理します。
■ ① 求人票の作成準備は5月中に
6月1日の受付開始に間に合わせるため、
・募集職種
・勤務条件
・初任給
・福利厚生
などの見直しを早めに行う必要があります。
■ ② 学校訪問の計画を早めに
7月1日から学校訪問が可能になります。特に複数校を訪問する企業は、スケジュール調整が重要です。
■ ③ 選考体制の整備
9月16日から選考開始となるため、
・面接官の確保
・選考基準の明確化
・内定後フォローの体制
を事前に整えておくことが求められます。
まとめ
高卒採用は、地域の雇用環境や学校との関係性が大きく影響する領域です。また、採用スケジュールが厳格に決まっているため、「準備の早さ」が採用成功の鍵になります。
企業としては、単にスケジュールを守るだけでなく、高校生にとって魅力的な職場づくりを進めることが、長期的な採用力向上につながります。
詳細は、以下よりご確認願います。
厚生労働省は、職業安定法施行規則の一部を改正する省令案について、パブリックコメントによる意見募集を行っております。
〇改正の概要
・職業紹介責任者の兼任【規則第24条の6第1項関係】
有料職業紹介事業者が事業所を新設する場合にあっては、当該事業所を新設する事業年度の翌事業年度末までの間、当該有料職業紹介事業者が有料の職業紹介事業を行っている他の事業所の職業紹介責任者(職業紹介責任者として実務に従事した期間が通算して10年以上である者に限る。)を新設事業所の職業紹介責任者として兼任させることができることとする。
この場合において、当該他の事業所又は新設事業所において職業紹介に係る業務に従事する者の合計の人数は、職業紹介責任者1人につき50人以下とする。 また、既存事業所又は新設事業所において職業紹介に係る業務に従事する者の数が 50 人を超えるときは、当該職業紹介に係る業務に従事する者の数が50人を超える事業 所の職業紹介責任者のうち少なくとも1人以上は、当該事業所に専属の職業紹介責任 者とする。
・兼任させるにあたって提出する書類【規則第23条関係】
職業安定法第32条の7第1項の規定による届出のうち、事業所の新設に係る変更の届出(事業所の新設に当たって有料職業紹介事業者が職業紹介責任者を兼任させる場合に限る。)にあっては、規則第23 条第2項の有料職業紹介事業変更届出書には、当該新設する事業所に係る規則第18条 第3項第1号チからルまでに掲げる書類及び当該兼任に関する書類を添付しなければならないこととする。ただし、当該有料職業紹介事業者が有料の職業紹介事業又は無 料の職業紹介事業を行っている他の事業所の職業紹介責任者を当該新設する事業所の職業紹介責任者として引き続き選任したとき又は兼任させたときは、同号ヌに掲げる書類のうち履歴書及び受講証明書を添付することを要しないこととする。
〇施行期日:令和8年4月1日
上記について簡単に要点をまとめると以下の通りです。
・新設事業所では、翌事業年度末までの期間に限り、他事業所の職業紹介責任者を兼任可能
・兼任できる責任者は「通算10年以上の実務経験」を有する者
・責任者1人が統括できる従事者数は、複数事業所合計で50人以下
・従事者が50人を超える事業所には、専属責任者を1人以上配置
・届出時には、兼任に関する書類の添付が必要(ただし一部書類は省略可)
また、令和7年12月23日に開催された「第389回労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会」の資料2には、「職業紹介責任者の兼任のイメージ」「想定される兼任方法」が掲載されております。改正内容が理解しやすくなると思いますので、掲載させていただきます。
(出典:第389回労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会 資料2)
詳細は、以下よりご確認願います。
厚生労働省は、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備に関する政令案 」について、パブリックコメントによる意見募集を行っております。
〇制定の概要
(1)職業安定法施行令の一部改正(第1条関係)
これは、令和7年法律第63号(改正法)の施行に伴い、求人申込みの受理に関するルールを整備するものです。
◆背景
職業安定法第5条の6第1項では、公共職業安定所(ハローワーク)等は原則としてすべての求人申込みを受理しなければならないとされています。ただし、同項第3号に基づき「政令で定める法律の規定に違反し、公表等の措置が講じられた者」からの求人申込みについては、受理しないことができると規定されています。 この「政令で定める法律の規定」が、職業安定法施行令第1条に列挙されています。
◆今回の改正のポイント
改正法第2条及び第3条の規定により、新たに以下の義務や禁止規定が設けられました。これらを求人申込みの不受理対象に含めるため、施行令が改正されます。
・カスタマーハラスメント防止のための事業主の雇用管理上の措置義務(労働 施策総合推進法第33条第1項)
・労働者がカスタマーハラスメントに関する相談を行ったこと又は事業主による相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いの禁止(労働施策総合推進法第33条第2項)
・求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止のための事業主の雇用管理上の措置義務(男女雇用機会均等法第13条第1項)
・求職者等に対するセクシュアルハラスメントに係る求職者等からの事業主に対する相談に関して、労働者が事業主による措置に協力した際に事実を述 べたことを理由とする当該労働者に対する解雇その他不利益な取扱いの禁 止(男女雇用機会均等法第13条第2項)
これらの法律の規定についても、求人申込みの不受理の対象となる法律の規定に含むこととされます。
施行期日は、令和8年10月1日の予定です。
その他、詳細は、以下よりご確認願います。
厚生労働省は、令和4年3月に卒業した新規学卒就職者の離職状況を取りまとめ公表しております。
■ 新規学卒就職者の就職後3年以内離職率 ( )内は前年差増減
【 中学 】54.1% (+3.6P)
【 高校 】 37.9% (▲0.5P)
【 短大等 】44.5% (▲0.1P)
【 大学 】 33.8% (▲1.1P)
■ 新規学卒就職者の産業別就職後3年以内離職率のうち離職率の高い上位5産業
( )内は前年差増減 ※「その他」を除く
(出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」)
詳細は、以下よりご確認願います。
厚生労働省の運営する職場情報総合サイト「しょくばらぼ」が2025年2月27日にリニューアルを行い、サービスを再開いたしました。
今回のリニューアルでは、大幅な機能の拡充が行われております。
【主な拡充内容】
・しょくばらぼは、「若者雇用促進総合サイト」、「女性の活躍推進企業データベース」、「両立支援のひろば」の3サイトに掲載されている企業の情報を掲載していますが、3サイトに掲載されていない企業も、しょくばらぼに掲載できるようになりました。
・「テレワーク制度」、「副業・兼業」、「正社員転換制度」、「中途採用・経験者採用の定着率」、「定年制」、「取得可能資格」、「オンボーディング制度・フォロー体制」といった求職者が知りたい情報を掲載できるようになりました。
・その他、設定した検索条件を一時的に保存する機能や、3サイトで掲載されている情報の一部が画面で表示されていなかった事象の解消等が行われております。
【しょくばらぼのメリット】
・企業の方:年間アクセス件数が約250万件(令和4年度)あります。掲載することにより、求職者や学生にPRすることができます。
・学生・求職者の方:個別企業等の幅広い職場情報の確認や複数の企業等を一覧化して比較することができます。
詳細は、以下よりご確認ください。
厚生労働省は、インターネットやSNSに労働者の募集に関する情報を載せる際の注意点についてまとめたリーフレットを作成し公開しております。
◆募集情報提供時の注意点
職業安定法では、インターネットやX等のSNSを含む広告等により、労働者の募集に関する情報等(以下、「募集情報」といいます)を提供するときは、虚偽の表示または誤解を生じさせる表示をしてはならないこととされています。
募集情報を提供する際には、以下の6情報を記載することが必要です。
①氏名(名称)
②住所
③連絡先
④業務内容
⑤就業場所
⑥賃金
募集主の皆さまは、インターネットやSNS等で労働者を募集する際、これらの情報が記載されて いない場合は法令違反となりますので注意してください。
リーフレットには、Q&Aも掲載されております。
詳細は、以下よりご確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/content/001358676.pdf
令和7年4月1日から職業安定法に基づく省令及び指針が一部改正され、募集情報等提供事業者は、労働者になろうとする方に金銭やギフト券等を提供することは原則禁止となるほか、利用料金や違約金に関する定めを、募集主に誤解が生じないようあらかじめ明示することが必要となります。
◆令和7年4月1日以降、新たに遵守すべき事項
(1)労働者になろうとする者に、金銭等の提供は好ましくなく、社会通念上相当と認められる程度を超えて、金銭などを提供することを行ってはいけません。
(2)募集情報等提供事業の利用料金、違約金等の額、発生条件、解除方法等を含む契約の内容について、分かりやすく明瞭かつ正確に記載した書面または電子メールその他の適切な方法により、あらかじめ募集主に誤解が生じないよう明示してください。
本件に関するリーフレットを作成し公開しております。
リーフレットでは、よくある問い合わせに関して、Q&A形式で掲載しております。
詳細は、以下よりご確認ください。
令和6年4月より、募集時等に明示すべき事項が追加されます。
求人企業・職業紹介事業者等が労働者の募集を行う場合・職業紹介を行う場合等には、募集する労働者の労働条件を明示することが必要ですが、令和6年4月1日からは、新たに以下の事項についても明示することが必要となります。
1 従事すべき業務の変更の範囲
2 就業の場所の変更の範囲
3 有期労働契約を更新する場合の基準に関する事項(通算契約期間又は更新回数の上限を含む)
※ 「変更の範囲」とは、雇入れ直後にとどまらず、将来の配置転換など今後の見込みも含めた、締結する 労働契約の期間中における変更の範囲のことをいいます。
(出典:厚生労働省リーフレット)
リーフレットは、「職業紹介事業者の皆様へ」、「求職者の皆様へ」も掲載されております。
詳細は、以下よりご確認ください。
