住宅手当は残業単価に含めるべき?──学校法人の是正勧告事案から考える算定基礎の実務(2026/4/20更新)

先日、新聞報道で 「住宅手当を残業単価に含めておらず、是正勧告を受けた大学があった」 という記事が掲載されました。20年以上にわたり住宅手当を割増賃金の算定基礎に含めていなかったとされています。

 この事案は、企業・学校法人を問わず、“住宅手当の扱い” を再確認する必要性を強く示しています。

 

■ なぜ住宅手当が問題になるのか

 割増賃金(残業代)の算定基礎から除外できる手当は、労基法施行規則で 7つ に限定されています。

 ・家族手当

 ・通勤手当

 ・別居手当

 ・子女教育手当

 ・住宅手当

 ・臨時に支払われた賃金

 ・1か月を超える期間ごとに支払われる賃金

 このうち 住宅手当 は「除外できる」とされていますが、 “名称が住宅手当であれば何でも除外できる”わけではありません。

 ポイントは 支給実態 です。

 

■ 除外できる住宅手当・できない住宅手当

● 除外できるケース

 ・家賃額に応じて支給額が変動する

 ・家賃の一定割合を補助する

 

● 除外できないケース

 ・全員に一律で1万円支給

 ・家賃額に関係なく定額

 今回の大学のケースも、報道内容からすると 「一律定額支給」だった可能性が高いと考えられます。

 

■ なぜ誤りが起きやすいのか

 住宅手当は名称が一般的で、「住宅手当=除外できる」という誤解が広く浸透しています。

 しかし実務では、

 ・就業規則の文言が曖昧

 ・家賃に連動していない

 ・長年の慣行で見直しがされていない

 ・制度が古いまま

といった理由で、誤った運用が続いてしまうことが少なくありません。

 

■ 誤りが発覚した場合の影響

 算定基礎に含めるべき手当を除外していた場合、 残業代の不足分を遡って支払う必要があります。

 ・遡及期間:原則3年

 ・対象者が多いほど金額は大きくなる

 ・人数が多い企業では影響が大きい

 ・是正勧告・指導の対象になる可能性

 本大学のケースでは、報道によれば 年間約1,800万円規模 の未払いが生じた可能性があるとされています。

 

■ 企業が今すぐ確認すべきポイント

 以下の3点をチェックするだけで、誤りの大半は防げます。

 

① 住宅手当は「家賃に応じて変動」しているか

→ 変動していなければ算定基礎に含める可能性が高い

 

② 就業規則に支給基準が明確に書かれているか

→ 「住宅手当を支給する」だけでは不十分

 

■ 社労士としての実務的アドバイス

 ・名称ではなく 支給実態で判断 する

 ・「一律支給の住宅手当」は原則として算定基礎に含める

 ・就業規則の支給基準を明確にする

 ・過去の運用を棚卸しし、必要に応じて是正する

 

■ まとめ

 今回の大学の事案は、「住宅手当=除外できる」という思い込みが招いた典型例 といえます。

 企業・学校法人ともに、住宅手当の支給実態を改めて確認し、必要に応じて制度の見直しを行うことが重要です。

 特に一律支給の住宅手当を採用している場合は、残業単価に含める必要がある可能性が高いため、 早めのチェックをおすすめします。

 

厚生労働省「モデル就業規則」2025年12月版が公開されました(2026/1/13更新)

厚生労働省は、企業が就業規則を作成・改定する際の参考となる「モデル就業規則」を定期的に更新しています。 このたび 2025年12月版(令和7年12月版) が公開され、いくつか重要な改訂が行われました。

 本記事では、今回の改訂ポイントと、企業が押さえておくべき実務上の視点を整理します。

 

 

1. 今回の主な改訂ポイント

 厚生労働省が公表した内容によると、2025年12月版の主な改訂点は次の3つです。

 

① 議員立候補のための休暇規程を追加(第32条)

 国会議員・地方議会議員に立候補する従業員に対し、 選挙活動のための休暇を認める規程例 が新たに盛り込まれました。政治参加を支援する観点から、企業としても対応方針を明確にしておく必要があります。

 

② 犯罪被害者等の被害回復のための休暇等を追加(第5章解説)

 犯罪被害者やその家族が、心身の治療のための通院や、警察等からの事情聴取、裁判への出廷・傍聴等に活用することのできる休暇制度について、紹介と解説が追加されました。

 

③ その他、法改正の反映など所要の改正

 2025年時点での法改正内容を踏まえ、 モデル就業規則全体にわたり必要な修正が行われています。

 

2. 企業が今すぐ確認すべきポイント

 

✔ 特別休暇制度の見直し

 今回の改訂では、特別休暇に関する解説が強化されています。 自社の制度が社会的要請に応えられているか、再点検が必要です。

 

✔ 選挙立候補への対応方針

 従業員が立候補するケースは多くありませんが、 規程がないとトラブルの原因になる場合があります。就業規則に記載することを検討されてみてはいかがでしょうか。

 

✔ 法改正への対応状況

 自社規程が最新の法令に沿っているか確認しましょう。

 

3. まとめ:2026年に向けて、就業規則のアップデートを

 2025年12月版のモデル就業規則は、 社会情勢の変化や法改正を踏まえた内容となっています。特に、休暇は、企業の姿勢が問われる領域です。

 2026年に向けて、 自社の就業規則が現状に合っているか、改めて点検する良いタイミング といえるでしょう。

 

 詳細は、以下よりご確認願います。

 

 

就業規則の本社一括届出について(令和7年3月28日基発0328第9号)のご紹介(2025/4/29更新)

厚生労働省は、4月24日に以下の3つの通知を掲載しております。

 

・就業規則の本社一括届出について(令和7年3月28日基発0328第9号)

 

・時間外労働・休日労働に関する協定の本社一括届出について(令和7年3月28日基発0328第8号)(

 

・一年単位の変形労働時間制に関する協定の本社一括届出について(令和7年3月28日基発0328第7号)

 

 本日から、3日間上記通達についてご紹介させていただきます。

本日は、「就業規則の本社一括届出について(令和7年3月28日基発0328第9号)」をご紹介します。

 

 

 事業場ごとに作成され た就業規則は、当該事業場の所轄労働基準監督署長に届け出ることとされており、複数の事業場を有する企業において、本社機能を有する事業場の使用者から、本社及び当該企業の本社以外の事業場に係る就業規則について一括して届出が行われた場合には、各事業場の所轄署長に届出がなされたものとして取 り扱って差し支えないこととされております。

 

1 書面又はCD-ROM等の電磁的記録媒体による届出を行う場合

次の⑴から⑷の全てを満たした場合に限り一括して届出を行うことができる こと。 

⑴ 本社の就業規則と就業規則の内容が同一であること。 

⑵ 本社を含む事業場の数に対応した必要部数の就業規則及び事業場ごとに作 成した法第90条第2項に定める書面(以下「意見書」という。)の正本を提出 すること。

⑶ 各事業場の名称、所在地及び所轄署長名が記載された一覧表を添付し、本社 の所轄署長に届け出ること。 

⑷ 法第89条各号に定める事項について当該企業の本社で作成された就業規則と各事業場の就業規則が同一の内容のものである旨を附記すること。 

 なお、就業規則の変更の届出の場合にあっては、変更前の就業規則の内容についても同一である旨を附記すること。

 

 以下に参考までに一覧表の記載例を掲載します。

※図(出典:東京労働局「就業規則の 一括届出について」

 

2 e-Govから電子申請を行う場合 

 

 次の⑴から⑶の全てを満たした場合に限り一括して届出を行うことができる こと。

 ⑴ 本社の就業規則と就業規則の内容が同一であること。

 ⑵ 「事業の名称」、「事業の所在地(電話番号)」、「業種」、「労働者数」、 「管轄労働局」、「所轄労働基準監督署長名」及び「労働保険番号」とともに、 上記1⑷が記載された所定の電子ファイル(以下「一括届出事業場一覧」とい う。)を添付して、本社の所轄署長に届け出ること。

 ⑶ 就業規則の電子媒体は1部のみ添付すれば足りるが、意見書の電子媒体については事業場ごとに作成したものを添付すること。

 

3 労働条件ポータルサイト「確かめよう 労働条件」から電子申請を行う場合

 省略

※詳しくは、本通達をご確認ください。

 

 詳細は、以下よりご確認ください。

https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T250424K0010.pdf