厚生労働省は、「無期転換ルール及び多様な正社員等の労働契約関係の明確化に関する考え方と裁判例」 というリーフレットを作成し、公表しております。
労働契約法の基本的な考え方から、企業が直面しやすい実務上の論点、そして参考となる裁判例まで、非常にコンパクトに整理された資料です。
社労士として日々相談を受ける中でも、「まずここを押さえておくと理解が早い」と感じるポイントが詰まっています。
リーフレットでは、「無期転換ルール」と「多様な正社員」の大きく2つに分けて記載されております。
中身のご紹介の前にそれぞれについてどのような制度か、簡単に説明を記載します。
■ 無期転換ルールとは
同一の使用者(企業)との間で、
・[有期労働契約が5年を超えて更新された場合]、
・[有期契約労働者(契約社員、アルバイトなど)からの申込み]により、
・[期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換]されるルールのことです。
有期契約労働者が使用者(企業)に対して無期転換の申込みをした場合、無期労働契約が成立します(使用者は断ることができません。)。
実務では、更新管理や雇止めの判断が曖昧なまま運用されているケースも多く、後のトラブルにつながりやすい部分です。
■ 「多様な正社員」とは
「多様な正社員」とは、従来型のいわゆる正社員と比べ、職務内容、勤務地、労働時間などを限定して選択できる正社員をいいます。限定の仕方は様々で、いわゆる正社員と別の社員区分を設けていない場合もあります。
いわゆる正社員と非正規雇用の労働者との働き方の二極化を緩和し、労働者一人ひとりのワーク・ライフ・バランスと、企業による優秀な人材の確保や定着を同時に可能とするような、労使双方にとって望ましい多元的な働き方の実現が求められています。そうした働き方や雇用の在り方の一つとして、「多様な正社員」の普及を図ることが重要となってきています。
リーフレットは、以下の論点について、裁判例を紹介してまとめられています。
〇無期転換ルール
1. 無期転換前の雇止め等
① 無期転換申込権が発生する直前に合理的な理由のない雇止め
② 無期転換申込権発生前に新たに(一方的に)更新上限を設定して上限を理由に雇止め
③ 当初の契約締結時から更新上限を設定して無期転換申込権発生前に雇止め
④ 再雇用を約束した上で雇止めをし、クーリング期間経過後に再雇用
⑤ 無期転換申込権が生じる前に派遣や請負を偽装して形式的に他の使用者に切替え
⑥ 無期転換後の労働条件について(一方的に)不合理な「別段の定め」をすることによる無期転換申込みの抑制
⑦ 無期転換申込みの拒否
⑧ 無期転換申込権の事前放棄の強要
⑨ 細切れな定年を設定し、無期転換後、数年で定年退職
2. 無期転換申込みを行ったこと等を理由とする不利益取扱い
〇多様な正社員
1. 労働条件の変更
2. 勤務地、職務、勤務時間についての限定合意
① 限定合意と配転命令
② 限定合意と労働者の同意
③ その他(限定合意が認められない場合)
3. 整理解雇
① 勤務地や職務限定と整理解雇の考え方
② 解雇の有効性の判断の傾向
③ 勤務地限定や高度な専門性を伴わない職務限定と整理解雇法理の判断の傾向
4. 能力不足解雇
5. その他
裁判例は、以下のような形で、概要、判断のポイント、判断、理由が簡潔にまとめられています。
(出典:厚生労働省「無期転換ルール及び多様な正社員等の労働契約関係の明確化に関する考え方と裁判例」)
◎まとめ
今回紹介したリーフレットは、労働契約に関する基本的な考え方を整理するうえで非常に有用です。特に、無期転換ルールや多様な正社員制度は、企業の人事戦略や働き方改革とも密接に関わるテーマです。
ブログを読んでくださった方が、 「うちの会社の運用は大丈夫だろうか」 「制度を見直すタイミングかもしれない」 と考えるきっかけになれば幸いです。
詳細は、以下よりご確認願います。
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001613904.pdf
労働契約法については、以下の特集ページもご参照願います。
厚生労働省の「多様な働き方の実現応援サイト」では、令和5年11月20日に開催された「多様な正社員」制度導入支援セミナーの資料・動画を掲載しております。
本セミナーでは、多様な人材活用のヒントとなるよう、「多様な働き方」に関するトレンドや、勤務地や職務内容、勤務時間などを限定した「多様な正社員」制度のポイント、実際に「多様な働き方」を実践されている先進事例などを紹介しています。
令和5年度の第1回目の内容は、以下の通りです。
・基調講演「多様な正社員」制度の導入に向けて
・事例紹介 企業事例のご紹介(2社)
・パネルディスカッション
以下よりご確認ください。
いわゆる正社員と非正規雇用の労働者との働き方の二極化を緩和し、労働者一人ひとりのワーク・ライフ・バランスと、企業による優秀な人材の確保や定着を同時に可能とするような、労使双方にとって望ましい多元的な働き方の実現が求められています。
そうした働き方や雇用の在り方の一つとして、職務、勤務地、労働時間を限定した「多様な正社員」の普及を図ることが重要となってきています。
今回、「多様な正社員」及び労働契約法に定める「無期転換ルール」について、企業での制度導入支援を支援するツールとして、「多様な正社員及び無期転換ルールに係るモデル就業規則と解説」の全業種版について改訂が行われました。
本冊子では、「多様な正社員」制度の導入・運用、「無期転換ルール」への対応を円滑に行うために、就業規則見直しのガイドとなる規定例が掲載されております。
規定例は、「多様な正社員」制度の導入や「無期転換ルール」への対応に際して、必ず明示していただきたい「必要事項」と、有期契約労働者を活用する観点から考えていただきたい 「検討事項」に分けて整理されております。
また、本冊子は、導入を検討している「多様な正社員」制度、「無期転換ルール」に応じて、該当する箇所をお読みいただくことにより、必要な知識を得ることができるように構成されております。
以下の内容が掲載されております。
第1章 多様な正社員制度・無期転換ルールとは
第2章 多様な正社員制度・無期転換ルールの導入手順
第3章 多様な正社員・無期転換ルール導入のためのモデル就業規則と解説
第4章 多様な正社員制度・無期転換ルールの運用・改善に向けた事例紹介と解説
詳細は、以下よりご確認ください。
有期契約労働者の無期転換サイトがリニューアルされました。
無期転換ルールとは労働契約法の改正により、同一の使用者(企業)との間で、有期労働契約が更新されて通算5年を超えたときに、労働者の申込みによって無期労働契約に転換されるルールです。
WEBサイトは、以下のような内容で構成されております。
〇契約社員・アルバイトの方向け
・無期転換ルールとは
・無期転換社員の声
・各種お問合せ
〇事業主・人事労務の方向け
・無期転換ルールとは
・導入のポイント
・導入企業事例
・無期転換社員の声
・導入支援策
・無期転換ルールの特例
・各種お問い合わせ
〇Q&A
・契約社員・アルバイトの方向けQ&A
・事業主・人事労務の方向けQ&A
2024年4月からは、労働条件明示のルールが変わり、「無期転換申込機会の明示」が無期転換申込権が発生する更新のタイミングごとに必要となるため、有期契約労働者からの無期転換に関する問い合わせが増えることが予想されます。
上記のWEBサイトを参考にされてみてはいかがでしょうか。
