⑥労働保険・社会保険

第11回:失業手当を受給できなくなる“意外な落とし穴”―知らないうちにトラブルに?専門家が教える注意ポイント―

失業手当(基本手当)は、離職後の生活を支える大切な制度です。

 しかし、制度を正しく理解していないと、「そんなつもりはなかったのに」受給に影響が生じたり、後から返還を求められたりするケースがあります。
 多くの方が思い浮かべるのは、
 ・アルバイトをして収入を得た

 ・業務委託で仕事をした
 といった典型的なケースでしょう。
 しかし実際には、本人は「仕事ではない」と考えていても、ハローワークから就労や事業活動等に該当すると判断される可能性がある行為も存在します。
 今回は、失業手当の受給中に注意したい“意外な落とし穴”について解説します。

 

 

■意外な落とし穴①:知人の仕事を“ちょっと手伝っただけ”
 「友人のお店が忙しいので1日だけ手伝った」
 「お礼として現金を受け取った」
 こうしたケースでは、本人は単なる手伝いのつもりでも、実態によっては就労と判断される可能性があります。
 雇用契約書の有無だけで判断されるわけではありません。
 ハローワークでは、
 ・実際に労働を提供したか

 ・対価を受け取ったか
 などの事情を総合的に確認します。
 「お礼だから大丈夫だろう」と自己判断して申告しないことは避けるべきでしょう。

■意外な落とし穴②:家業の手伝い(無償でも注意)
 家族経営の店舗や会社、農業などを手伝った場合も注意が必要です。
 例えば、
 ・実家の飲食店で接客をした

 ・家族の会社で事務作業をした

 ・農繁期に農作業を手伝った
 といったケースです。
 本人は「家族だから」「無償だから」と考えがちですが、継続的に事業運営に関与していると判断される場合には、就労や自営準備活動等として受給に影響する可能性があります。 
 判断は個別事情によって異なるため、事前に相談することが重要です。

■意外な落とし穴③:フリマアプリ・ネット販売
 メルカリやヤフオクなどの利用も、内容によって取扱いが異なります。
 一般的な不用品の処分であれば、通常は問題となるケースは多くありません。
 一方で、
 ・仕入れて販売する

 ・ハンドメイド作品を継続的に販売する

 ・利益を目的として反復継続的に販売する
 といった場合には、事業活動と判断される可能性があります。
 ハローワークでは、
 ・継続性があるか

 ・利益獲得を目的としているか

 ・事業としての実態があるか
 などを総合的に判断します。

 

■意外な落とし穴④:講演料・モニター報酬
 意外と見落とされがちなのが、
 ・講演の謝礼

 ・セミナー登壇料

 ・モニター調査の報酬
 などです。
 金額の大小だけで判断できるものではありません。
 労務の提供や役務提供の対価として受け取ったものであれば、申告が必要となる場合があります。
 「少額だから大丈夫」と自己判断するのではなく、内容に応じて確認することが大切です。

■社労士としての専門的補足
●① 基本手当は「失業の状態」にある方を対象とする制度
 雇用保険制度における基本手当は、就職する意思と能力があり、積極的に求職活動を行っている方を対象としています。
 そのため、
 ・就労している場合

 ・事業活動を行っている場合

 ・自営を開始したと判断される場合
 などには、受給に影響が生じることがあります。

●② 判断されるのは「形式」ではなく「実態」
 契約書の有無や名称だけではなく、
 ・実際に何を行ったのか

 ・どの程度関与したのか

 ・対価があったのか
 といった実態が重視されます。
 「アルバイトではないから大丈夫」という考え方は危険です。

●③ 迷う場合は自己判断しない
 失業手当の取扱いは、活動内容や状況によって判断が分かれることがあります。
 同じような行為でも、
 ・頻度

 ・継続性

 ・収入の有無

 ・活動の目的
 などによって結論が異なる場合があります。
 「これくらいなら問題ないだろう」と自己判断せず、迷ったときはハローワークへ相談することが重要です。

●④ 申告漏れが大きなトラブルにつながることも
 申告漏れがあると、本人に不正受給の意思がなかった場合でも、結果として受給額の返還を求められることがあります。
 また、虚偽申告や事実の不申告があったと判断された場合には、
 ・受給額の返還

 ・納付命令

 ・以後の受給停止
 などの厳しい措置が取られる可能性があります。

■どうすれば失敗を防げるのか
●① 迷ったら必ずハローワークへ相談する

 最大のリスクは、「相談せずに自己判断すること」です。
 事前に相談しておけば、多くのトラブルは防ぐことができます。

●② フリマやネット販売は内容をよく確認する
 一般的な不用品処分と事業活動では取扱いが異なります。
 継続的な販売や利益目的の活動には注意が必要です。

●③ 家族や知人の手伝いも慎重に考える
 本人の認識ではなく、実態によって判断されます。
 無償だから問題ないとは限りません。

●④ 役務提供の対価は申告の要否を確認する
 講演料や謝礼などを受け取った場合には、内容に応じてハローワークへ確認しましょう。

■まとめ:誠実な申告が最大の防御
 失業手当の受給中は、本人が仕事と思っていない行為であっても、就労や事業活動等と判断される可能性があります。
 しかし、多くの場合は事前相談や適切な申告によってトラブルを防ぐことができます。
 制度を正しく理解し、「迷ったら相談する」という姿勢を持つことが、安心して再就職活動に取り組むための最も確実な方法といえるでしょう。