有期契約労働者の無期転換サイトがリニューアルされました。
無期転換ルールとは労働契約法の改正により、同一の使用者(企業)との間で、有期労働契約が更新されて通算5年を超えたときに、労働者の申込みによって無期労働契約に転換されるルールです。
WEBサイトは、以下のような内容で構成されております。
〇契約社員・アルバイトの方向け
・無期転換ルールとは
・無期転換社員の声
・各種お問合せ
〇事業主・人事労務の方向け
・無期転換ルールとは
・導入のポイント
・導入企業事例
・無期転換社員の声
・導入支援策
・無期転換ルールの特例
・各種お問い合わせ
〇Q&A
・契約社員・アルバイトの方向けQ&A
・事業主・人事労務の方向けQ&A
2024年4月からは、労働条件明示のルールが変わり、「無期転換申込機会の明示」が無期転換申込権が発生する更新のタイミングごとに必要となるため、有期契約労働者からの無期転換に関する問い合わせが増えることが予想されます。
上記のWEBサイトを参考にされてみてはいかがでしょうか。
厚生労働省は、第188回労働政策審議会労働条件分科会(資料)を公開しております。
今回、「労働基準法施行規則及び労働時間等の設定の改善に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令案要綱」等について諮問が行われ、「おおむね妥当と考える」との答申がされました。
掲載されている資料より概要を抜粋してご紹介します。(太字は筆者が加工)
●労働基準法施行規則及び労働時間等の設定の改善に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令案
(1)無期転換ルール及び労働契約関係の明確化について
・労働基準法第15条第1項前段に基づく労働条件明示事項に、通算契約期間又は有期労働契約の更新回数の上限並びに就業場所・業務の変更の範囲を追加する。
・無期転換申込権が発生する契約更新時における法第15条第1項前段に基づく労働条件明示事項に、無期転換申込機会と無期転換後の労働条件を追加する。
・無期転換後の労働条件を明示する際には、労働契約の締結時に書面の交付等の方法により明示することとされている事項については、書面の交付等の方法により明示することとする。
(2)裁量労働制について
(対象労働者の要件)
・企画業務型裁量労働制について、対象労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度を変更する場合に、使用者が労使委員会に変更内容について説明を行うことを決議事項に追加することとする。
(本人同意・同意の撤回)
・専門業務型裁量労働制について、本人同意を得ることや、同意をしなかった場合に不利益取扱いをしないことを協定事項に追加することとする。
・専門型及び企画型について、同意の撤回の手続を協定事項及び決議事項に追加することとする。
(労使委員会の実効性向上)
省略
(行政の関与・記録の保存等)
・6か月以内ごとに行うこととされている企画型の定期報告の頻度を初回は6か月以内に1回及びその後1年以内ごとに1回とすることとする。
・専門型・企画型ともに、健康・福祉確保措置の実施状況等に関する労働者ごとの記録を作成し、保存することとする。
●有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準 の一部を改正する件案
①使用者は、有期労働契約の締結後、当該有期労働契約の変更又は更新に際して、通算契約期間又は有期労働契約の更新回数について、上限を定め、又はこれを引き下げようとするときは、あらかじめ、その理由を労働者に説明しなければならないこととする。
②使用者は、労働基準法第15条第1項の規定により、労働者に対して無期転換後の労働条件を明示する場合においては、当該労働条件に関する定めをするに当たって労働契約法第3条第2項の規定の趣旨を踏まえて就業の実態に応じて均衡を考慮した事項について、当該労働者に説明するよう努めなければならないこととする。
この他、企画業務型裁量労働制に関する告示案も掲載されておりますが、長くなりますので、今回は省略します。
適用期日は、令和6年4月1日が予定されております。
詳細は、以下よりご確認ください。
「労働基準法施行規則及び労働時間等の設定の改善に関する特別措置法施行規則
の一部を改正する省令案」と「労働基準法第三十八条の四第一項の規定により同項第 一号の業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るための指針及び労働基準法施行規則第二十四条の二の二第二項第六号の規定に基づき厚生労働大臣の指定する業務の一部を改正する告示案」について、パブリックコメントによる意見募集が行われております。
〇改正の概要
「労働基準法施行規則及び労働時間等の設定の改善に関する特別措置法施行規則
の一部を改正する省令案」
(1)無期転換ルール及び労働契約関係の明確化について
○法第15条第1項前段に基づく労働条件明示事項に、通算契約期間又は有期労働契約の更新回数の上限並びに就業場所・業務の変更の範囲を追加する。
○無期転換申込権が発生する契約更新時における法第15条第1項前段に基づく労働条件明示の明示事項に、無期転換申込機会と無期転換後の労働条件を追加する。
○無期転換後の労働条件を明示する際には、労働契約の締結時に書面の交付等の方法により明示することとされている事項については、書面の交付等の方法により明示することとする。
(2)裁量労働制について
(労働者が理解・納得した上での制度の適用と裁量の確保:対象労働者の要件)
○企画業務型裁量労働制について、対象労働者に適用される賃金・評価制度を変更する場合に、使用者が労使委員会に変更内容について説明を行うことを決議事項に追加することとする 。
(労働者が理解・納得した上での制度の適用と裁量の確保:本人同意・同意の撤回)
○専門型について、本人同意を得ることや、同意をしなかった場合に不利益取扱いをしないことを協定事項に追加することとする。
○専門型及び企画型について、同意の撤回の手続を協定事項及び決議事項に追加することとする。
(労使コミュニケーションの促進等を通じた適正な制度運用の確保:労使委員会の導入促進と労使協議の実効性向上)
○企画型について、使用者が労使委員会に対象労働者に適用される賃金・評価制度の内容について説明することに関する事項を労使委員会の 運営規程に定めることとする。
○企画型について、労使委員会が制度の実施状況の把握及び運用の改善等を行うこと に関する事項を労使委員会の運営規程に定めることとする 。
○労使委員会の開催頻度を6か月以内ごとに1回とすることを労使委員会の運営規程に定めることとするとともに、労働者側委員の選出手続の適正化を図ること等とする 。
(労使コミュニケーションの促進等を通じた適正な制度運用の確保:行政の関与・記録の保存等)
○6か月以内ごとに行うこととされている企画型の定期報告の頻度を初回は6か月以内に1回及びその後1年以内ごとに1回とすることとする。
○専門型・企画型ともに、健康・福祉確保措置の実施状況等に関する書類を労働者ごとに作成し、保存することとする。
「労働基準法第三十八条の四第一項の規定により同項第 一号の業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るための指針及び労働基準法施行規則第二十四条の二の二第二項第六号の規定に基づき厚生労働大臣の指定する業務の一部を改正する告示案」
(1)労働基準法第38条の4第1項の規定により同項第1号の業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るための指針について、企画業務型裁量労働制に係る以下の改正を行う 。
(労働者が理解・納得した上での制度の適用と裁量の確保:対象労働者の要件)
○対象労働者を定めるに当たっての適切な協議を促すため、使用者が当該事業場における労働者の賃金水準を労使協議の当事者に提示することが望ましいことを示すこととする 。
○対象労働者に適用される賃金・評価制度を変更しようとする場合に、使用者が労使委員会に事前に変更内容について説明を行うことが適当であることに留意することが必要であることとする 。
(労働者が理解・納得した上での制度の適用と裁量の確保:本人同意・同意の撤回)
○本人同意を得る際に、使用者が労働者に対し制度概要等について説明することが適当であること等を示すこととする 。
○同意を撤回した場合に不利益取扱いをしてはならないことを示し 、撤回後の配置や 処遇等についてあらかじめ定めることが望ましいことを示すこととする 。
(労働者が理解・納得した上での制度の適用と裁量の確保:業務量のコントロール等を通じた裁量の確保)
○裁量労働制は、始業・終業時刻その他の時間配分の決定を労働者に委ねる制度であることを示すこととする 。
○労働者から時間配分の決定等に関する裁量が失われた場合には、労働時間のみなしの効果は生じないものであることに留意することを示すこととする 。
(労働者の健康と処遇の確保:健康・福祉確保措置)
○健康・福祉確保措置の追加(勤務間インターバルの確保、深夜業の回数制限、労働時間の上限措置(一定の労働時間を超えた場合の適用解除)、医師の面接指導)等を行うこととする 。
○健康・福祉確保措置の内容を「事業場における制度的な措置」と「個々の対象労働者に対する措置」に分類した上で、それぞれから1つずつ以上を実施することが望ましいことを示すこととする 。
○「労働時間の状況」の概念及びその把握方法が労働安全衛生法と同一のものであることを示すこととする 。
(労働者の健康と処遇の確保:みなし労働時間の設定と処遇の確保)
○みなし労働時間の設定に当たっては対象業務の内容、賃金・評価制度を考慮して適切な水準とする必要があることや対象労働者に適用される賃金・評価制度において相応の処遇を確保する必要があることを示すこと等とする 。
(労使コミュニケーションの促進等を通じた適正な制度運用の確保:労使委員会の導入促進と労使協議の実効性向上)
○運営規程を定めるに当たっては、決議に先立って、使用者が労使委員会に対象労働者に適用される賃金・評価制度の内容について説明する必要があることに留意することが必要であることを示すことする。
○労使委員会が制度の実施状況の把握及び運用の改善等を行うこと等とする 。
○労使委員会の委員が制度の実施状況に関する情報を十分に把握するため、賃金・評価制度の運用状況の開示を行うことが望ましいことを示すこととする。
○労働者側委員の選出手続の適正化を図ること等とする。
(労使コミュニケーションの促進等を通じた適正な制度運用の確保:苦情処理措置)
○本人同意の事前説明時に苦情の申出方法等を対象労働者に伝えることが望ましいことを示すこととする 。
○労使委員会が苦情の内容を確実に把握できるようにすることや、苦情に至らないような運用上の問題点についても幅広く相談できる体制を整備することが望ましいことを示すこととする 。
(2)労働基準法施行規則第24 条の2の2第2項第6号の規定に基づき厚生労働大臣の指定する業務(平成9年労働省告示第7号)について、以下の改正を行う。
○銀行又は証券会社において、顧客に対し、合併、買収等に関する考案及び助言をする業務について専門型の対象とすることとする。
◆適用期日等
告示日:令和5年3月上旬(予定)
適用期日:令和6年4月1日
詳細は、以下よりご確認ください。
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495220317&Mode=0
厚生労働省は、第177回労働政策審議会労働条件分科会の資料を公開しております。
今回、無期転換ルールに関する論点についての資料が掲載されております。
論点項目一覧として、以下の項目が記載されております。
1.無期転換ルールに関する見直しについて
(1) 総論
(2) 無期転換を希望する労働者の転換申込機会の確保
(3) 無期転換前の雇止め等
(4) 通算契約期間及びクーリング期間
(5) 無期転換後の労働条件
(6) 有期雇用特別措置法に基づく無期転換ルールの特例
(7) その他
2.多様な正社員の労働契約関係の明確化等について
(1) 総論
(2) 労働契約関係の明確化
(3) その他
3.その他
(1) 労使コミュニケーション等
(2) その他
それぞれの論点について、対応の方向性(案)が掲載されております。
一例として、(3)無期転換前の雇止め等については、
【論点】
○無期転換前の雇止めやその他の無期転換回避策とみられるもののうち、無期転換ルールの趣旨、雇止め法理や裁判例等に照らし問題があると考えられるケースへの対応について、どう考えるか。
○更新上限設定に関する紛争の未然防止や解決促進のための方策について、どう考えるか。
具体的には、検討会報告書で示された以下の対応策について、どう考えるか。
・使用者から個々の労働者に対して、労働条件の明示の際に、更新上限の有無及びその内容を明示することについて
・使用者から個々の労働者に対して、最初の契約締結より後に更新上限を新たに設ける場合には、労働者の求めに応じて上限設定の理由を説明することについて
○無期転換申込みを行ったこと等を理由とする不利益取扱いへの対応について、どう考えるか。
【対応の方向性(案)】
○無期転換前の雇止めや不利益取扱い等について、法令や裁判例に基づく考え方・留意点等を整理し、周知するとともに、個別労働紛争解決制度による助言・指導にも活用していくこととしてはどうか。
○紛争の未然防止や解決促進のため、①更新上限の有無及びその内容の労働者への明示の義務づけ、②最初の契約締結より後に、更新上限を新たに設ける又は更新上限を短縮する場合には、その理由の労働者への事前説明の義務づけを行うこととしてはどうか。
その他、詳細は、以下よりご確認ください。
厚生労働省は、第174回労働政策審議会労働条件分科会の資料を公開しております。
今回、以下の2点について議題として上げられております。
(1)資金移動業者の口座への賃金支払について、 (2)無期転換ルール及び労働契約関係の明確化について
会議資料の中に、「無期転換ルールと多様な正社員に関する企業及び労働組合へのヒアリング結果まとめ」が掲載されており、この中から、無期転換の効果・課題に関する見解について一部抜粋してご紹介し、最後に私の個人の意見を述べさせていただきます。
まず、効果や課題について、以下の内容等が掲載されております。
・元々長期雇用を望んでいない短期雇用の従業員もおり、従業員から早めの無期転換の希望やクーリング期間の制度の廃止の希望の声は聞いたことがない。
・無期転換によって社員の安心感につながっており、また、その他の施策と相まって定着率の向上につながっている。
・有期雇用特別措置法について、定年後の再雇用時の届け出そのものに意味を感じない。廃止すべき。
・無期転換したとしても待遇差もなく、無期になりたいという人はほとんどいない。有期契約のままでも雇用不安定とは感じていない。働き方も無期になっても変わらない。
どれも、よく耳にする内容ですね。
最低賃金が上がると、税扶養のまま残るために、労働時間を短くする方が一定数おられるように、無期ではなく、有期雇用で働き続けることを希望される方も一定数おられるのも事実で、会社によっては、無期転換を回避するために、契約当初から、契約期間の上限を定め運用しているところもあります。
こうした企業に、有期雇用で長く働くことを希望される方が就職した場合、残念ながら、労働者側の有期雇用で働きたいという希望は叶いません。(退職するか、正社員転換制度に申込み正社員になって働き続けるかどちらかを選ぶことになります。)
ある程度の規模の会社であれば、短時間正社員制度や転勤のない限定正社員制度などがあるかもしれませんが、中小企業では、そのような制度が必ずしも整備されている訳ではなく、0か100かの選択を迫られます。
大切なのは、自分で希望する働き方ができる限り実現できることで、選択肢として、無期転換があるのは重要なことだと思います。
一方で、個人の働き方に対する考え方や家庭の事情まで、全ての従業員について把握するのは困難ですし、こうした事情は日々変化しますので、こうしたことまで考慮して、雇用期間を管理することは事実上困難だと思います。
現在の無期転換制度は、無期転換申込権の発生後、労働者が会社に対して無期転換する旨を申し出た場合、無期労働契約が成立し 、会社は断ることができないため、現在の期間だけ無期とすることを改正し、給与などの労働条件についてまで、正社員並みの待遇を強制することは企業側に対してかなり酷なことだと思います。
それよりも、まずは、パートタイム・有期雇用労働法の正社員登用制度が、制度はあるけれども形骸化しているケースが多いように個人的には感じますので、短時間正社員制度や限定正社員制度などを義務化するなど、色々な働き方に柔軟に対応できるように、もっと実効性のあるものに見直しをする方がよいように思います。
詳細は、以下よりご確認ください。